たかのサイコロ日記

地理情報を勉強しているベルリンの大学院生が、考えていること。

"グーグルマップの社会学"を読んだ。地図とは自分が持っている社会へのイメージらしい。

グーグルマップの社会学 ググられる地図の正体 (光文社新書)

グーグルマップの社会学 ググられる地図の正体 (光文社新書)

 

グーグルマップの創業ストーリーを読んで、グーグルマップが社会にどういう影響を与えているかに興味が出たので、しばらく前にタイトルに釣られてポチっていたグーグルマップの社会学を読むことにしました。グーグルマップの創業ストーリーについての記事はこちら。

takataka-blog.hatenablog.com

面白かったポイント

もともと社会を可視化するためのツールだった地図は、みんなが同じ紙地図を使っているうちは、同じ社会のイメージを共有することができました。しかし地図がデジタル化されることによって、多くの人は自分の周りのごく狭い半径と目的地しか見ないようになり、社会や都市の全体像を地図から学ぶことは少なくなりました。さらに、インターネットと同様にパーソナライズされた地図は、ユーザーが見たいものだけを見せるようになり(カフェをよく検索する人にはマップ上にカフェがたくさん表示されるなど)、同じ社会で生活していたとしても、その社会についての認識やイメージを一人ひとりが共有することが難しくなっています。その結果として、社会についてのイメージが共通のものから個人のバイアスによって偏ったものになっていき、社会にはあたかも自分の知っているもの(検索したことのあるもの)ばかりのような錯覚に陥ってしまうと著者は述べています。

このバイアスを調節するために、旅に出ることが重要らしいです。旅をして日常生活では出会わないもの= 今まで検索したことのないワード に出会い、自分の知っているものだけで構成されているネットの世界にノイズを入れる。そうすることによって、自分のネット世界や地図が広がって、新しい社会の捉え方ができるようになるとのことです。

感想

ネット世界がパーソナライズされて、見たいものだけ見せてくるというのは実感として感じていたけれど、それが地図にまで及んでいるのは著者に指摘されるまで気づきませんでした。自分の地図を拡張するために、知らない街に行ったり、自分と違う感性を持った人に会ったり、意識的にノイズを取り込みにいかなくちゃいけないと感じました。